人の振り見て…(型技術・パンタグラフ 2016年)

人の振り見て…

九州工業大学 楢原弘之

  今年は申年.久々にサル回しの出番かと思っていたが,今年の正月は,ほとんどTV出演を見かけなかった.これまでの申年だと,サルに「反省」のポーズをさせて大うけしていたことを思い出す.今なら,動物のいろんな動画が出回っていて,サルが反省してもウケない時代になったという事であろうか.

一部の若者を除いて最近の若者には元気が無いと時々耳にすることがあるが,気になるデータがある.2013年,日本青少年研究所公表の,高校生の生活意識に関する調査によると,「自分がダメな人間だと思う事があるか?」という質問に対して,「よくあてはまる」と回答した高校生は,1980年に15%だったのが,2011年には35%に増え,「まああてはまる」と回答した学生まで含めると,実に85%にもなったそうである.どうしてこんなに増えているのか?大人の子供への接し方や,日本社会の価値観の変化など,色々な事が関係しているのであろうか.反省する事は大事だが,反省しすぎになるのも見過ごせない気がする.

日本人はどんな物の言い方が潜在意識として染みついているのだろうか.「ことわざ」は,時々口について出てくる分,我々の思考回路にも影響を与えているのかもしれない.

年配の人達になじみのある「江戸いろはかるた」の表現を,ちょっと調べてみた.「鬼に金棒.」これはポジティブな表現.「骨折り損のくたびれ儲け.」これはネガティブな表現.「犬も歩けば棒にあたる.」これはポジティブとネガティブの両方の意味があるようである.「花より団子.」これはポジでもネガでもどちらでもなく中性(関係なし)といえよう.このように自分の独断で分類していくと,江戸いろはかるたには,ポジティブ表現が23%,ネガティブ表現が40%,両方の意味ありが8%,関係なしが29%含まれることが判った.

実に半数近くの札がネガティブ表現だということになる.見方を変えれば,ある意味,日本人は,慎重さを教訓として語り継いできたとも見えるし,逆に,そこが国民性として世界の中での日本の強みになっているのかもしれない.

「人の振り見て我が振り伸ばせ」.これは親戚が送ってくれた日めくりカレンダー「ほめくり修造」に書かれていた言葉である.普段良く聞く表現は「~わが振り直せ」と,他人の欠点を教訓にせよ,という意味になるが,松岡修造氏の手にかかると,他人の良い点を見つけて自分を背伸びさせてみよう,と内容が変わり「頑張る心を応援する本気のほめ言葉」になってくる.

世代間で価値観を共有できているのかどうか,どうもあやふやな現代においては,ポジティブに背中を押す特別な存在の人が,現代日本人には,とても必要とされているのかもしれない.

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