オープン化とテクノロジー(型技術・パンタグラフ 2014年)

オープン化とテクノロジー

九州工業大学 楢原弘之

 最近,安価な3Dプリンターが中小企業から続々と製品化されている事を不思議に思いませんでしたか?実は巷に出回っている安価な3Dプリンターの殆どは,公開された設計図をベースにして製品化しているからなのです. 2005年に英国バース大学のAdrian Bowyer教授が自己複製する試作装置という事を思いつき,RepRapプロジェクトが開始されました.彼は図面,回路図,ソフトウェアなど全ての設計情報を公開して,世界中に協力者を求めました.数多くのバリエーションが提案され,現在に至っています.

3Dプリンターの中のハードウェアやソフトウェア情報を良く調べてみれば,別のオープンソースのプロジェクトが利用されており,多数のボランティア達による努力の賜物ともいえるでしょう. 中小メーカーでも,移動機構の精度や調達に注力するだけで,素早く製品化する事が出来たのは,このような背景があったからなのです. オープンソース化により、世界的規模で低価格3Dプリンター市場が動いている現実を見ると,オープン化恐るべし,と感じます.

オープン化には,情報共有という大きなメリットがあるといえるのですが,情報共有するためにオープン化を促す事も,場合によっては必要だと思います.身近に有効な手段があったのに知らなかったりすると,無駄に時間がかかったり,アイデアの実現すらできなくなるという状況が起きかねないからです.私の研究室では,ここ数年前から「全体デモ」の日というのを実施するようにしています.

数年前までは,研究室に多数の最新設備やソフトウェアを導入し最新の研究を進めて,学生にも先端技術に触れさせているつもりになっていました.しかし各学生で見てみると,それらのテクノロジーの名前をミーティングでは聞いていても,実物すら見ずに卒業している様子でした.せっかく機会があるのに仲間が使っている最新装置や有効なソフトウェアツールに触れることがなく卒業するのでは,将来的にも,実にもったいない事です.

そこで学生達が仲間の使っているテクノロジーを良く知らない様ならば,研究室の行事としてそれらの技術に直に触れ合い,知識を吸収する機会を作ってしまおうと,「中間発表とデモ」大会を研究室で定期的に実施することにしたのです.自分達が今使っているテクノロジーを皆の前で実際に実演し,議論し合う場を設けることで,彼らが将来的にも自然と問題解決のオプションとして考えるようになるのではと期待しています.

ぜひ読者の皆さんもあなたの部署でやってみては?案外,知らなかったテクノロジーを発見し,問題解決できるようになるかもしれませんよ.

 

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